[短編]メンヘラになりたかった私
「結花、大丈夫なのかな……」
「大丈夫でしょ。
それよりさ、昨日のドラマ見た?」
「あ、うちは見たよ。面白かったよね」
そんな会話が聞こえたのは
帰り際のことだった。
あの後、私は
体調を崩して保健室にいたけど、
結局、放課後まで休んでしまった。
そろそろ帰ろうかと思い
荷物を持って靴箱に向かう途中、
あの会話が聞こえた。
「でもさ、あのドラマ。
ちょっと設定が変じゃない?」
「そうかな?」
「うん。味なのかな?」
「うーん……」
だんだんと足音が近づいて来る。
死角に隠れてるから、
きっと大丈夫だろうけど。
「ねぇ、みっちゃん。ゆきみん。
私、やっぱり結花が心配で……」
ふと、なっちゃんが
私の名前を出した。
私はピクリと反応する一方、
複雑な気持ちだった。
「あの、鈴木さんって子さ。
なんか存在感ないよね」
なっちゃんの言葉を打ち消すように
彼女の友達の声がした。
「えっ……」
あ、なっちゃんの声だ。
ものすごく戸惑ってる。
「あと、あんな子と関わっても
つまんないよ。
あの子、普通すぎて
取り柄ないもん」
普通……。
その言葉が私の心に重く響いた。
耳の奥でこだまする。
背中をイヤな汗が伝っていく。
心臓が気持ち悪く、
ドクドクと音を立てる。
まるで悪夢への
カウントダウンのように。
き、聞きたくない。何も。
ここに、居たくない。
この場に居てしまえば、
自分が壊れてしまうような気がする。
そんな私の感情は無視されて、
心臓がカウントしていく。
すると、当たり前のように
"ゼロ"になってしまった。
「だからさ、
あの鈴木さんと関わるの
もう辞めちゃえば?」
なっちゃんの友達は、
嫌味がある声でわざとらしく言う。
でも、なっちゃんの声はしない。
どうしたんだろう。
「うん…。そうだね。
関わらないようにするよ」
そう言ったなっちゃんの声色は
すごく明るいものだった。
私は走って帰った。
涙が、止まらない。
ただ辛くて、苦しい。
なっちゃんとの絆も
私が普通だというイメージも
全てが見たくない。
こんな現実、ひどいよ。
なっちゃんがもう関わらない
と言ったことよりも、
私にとって
「普通」
という言葉が重かった。
私は普通になりたくて、
こうなった訳じゃない。
私はこんなにも辛いのに、
普通だと思われる。
私の抱える傷を
誰かに知って欲しい。
気付いて欲しい。
私は、私は、
やっぱりメンヘラになりたい。
「大丈夫でしょ。
それよりさ、昨日のドラマ見た?」
「あ、うちは見たよ。面白かったよね」
そんな会話が聞こえたのは
帰り際のことだった。
あの後、私は
体調を崩して保健室にいたけど、
結局、放課後まで休んでしまった。
そろそろ帰ろうかと思い
荷物を持って靴箱に向かう途中、
あの会話が聞こえた。
「でもさ、あのドラマ。
ちょっと設定が変じゃない?」
「そうかな?」
「うん。味なのかな?」
「うーん……」
だんだんと足音が近づいて来る。
死角に隠れてるから、
きっと大丈夫だろうけど。
「ねぇ、みっちゃん。ゆきみん。
私、やっぱり結花が心配で……」
ふと、なっちゃんが
私の名前を出した。
私はピクリと反応する一方、
複雑な気持ちだった。
「あの、鈴木さんって子さ。
なんか存在感ないよね」
なっちゃんの言葉を打ち消すように
彼女の友達の声がした。
「えっ……」
あ、なっちゃんの声だ。
ものすごく戸惑ってる。
「あと、あんな子と関わっても
つまんないよ。
あの子、普通すぎて
取り柄ないもん」
普通……。
その言葉が私の心に重く響いた。
耳の奥でこだまする。
背中をイヤな汗が伝っていく。
心臓が気持ち悪く、
ドクドクと音を立てる。
まるで悪夢への
カウントダウンのように。
き、聞きたくない。何も。
ここに、居たくない。
この場に居てしまえば、
自分が壊れてしまうような気がする。
そんな私の感情は無視されて、
心臓がカウントしていく。
すると、当たり前のように
"ゼロ"になってしまった。
「だからさ、
あの鈴木さんと関わるの
もう辞めちゃえば?」
なっちゃんの友達は、
嫌味がある声でわざとらしく言う。
でも、なっちゃんの声はしない。
どうしたんだろう。
「うん…。そうだね。
関わらないようにするよ」
そう言ったなっちゃんの声色は
すごく明るいものだった。
私は走って帰った。
涙が、止まらない。
ただ辛くて、苦しい。
なっちゃんとの絆も
私が普通だというイメージも
全てが見たくない。
こんな現実、ひどいよ。
なっちゃんがもう関わらない
と言ったことよりも、
私にとって
「普通」
という言葉が重かった。
私は普通になりたくて、
こうなった訳じゃない。
私はこんなにも辛いのに、
普通だと思われる。
私の抱える傷を
誰かに知って欲しい。
気付いて欲しい。
私は、私は、
やっぱりメンヘラになりたい。