熱い夜に溺れて
私を抱きしめ、私の頭を撫でながらローデリヒさんは言う。私はすぐに首を横に振った。

「ローデリヒさんのお酒を楽しみにしている人、多いと思います。だから、バーテンダーをやめないでください」

人をこうして監禁するような人だけど、ローデリヒさんの作るカクテルがおいしいことは事実。「passion」がなくなれば悲しむ人がいると思った。

「アナ、愛してる。可愛いね」

ローデリヒさんは私に優しくキスを落とす。ローデリヒさんはいつも私に優しく触れる。暴力を振るったり、怒鳴ったりしない。それが救いだった。

「今日は、君のためだけにカクテルを作るね」

「楽しみにしています」

私がそう言うと、ローデリヒさんは私を抱きしめる腕に力を入れる。その日は一日中抱きしめられ、キスを何度もされた。

そして夜。なぜか赤と黒のクラシカルなドレスを着せられ、私は枷を外され部屋から初めて出してもらえた。

「こっちに来て」

ローデリヒさんに連れられやって来たのは、リビングと思われる場所。おしゃれなアンティーク調の家具が置かれている。そのテーブルの上に、おつまみのキッシュとカクテルグラスなどが用意されていた。
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