熱い夜に溺れて
今日はどんなカクテルを頼もうかな……。

そう胸を弾ませ、私は仕事へと向かった。



日が暮れ始めると、バーのある通りは人であふれる。みんな給料日なため、バーや酒場に人が集まるから。

「あれ?」

仕事を早く終わらせ、胸を弾ませて「passion」ヘ向かった私はバーの前で足を止める。

目の前の扉には、closedのプレート。いつもなら開いているはずなのだが急遽休みになったのかもしれない。

「……明日にしようかな」

このバー以外のお店で飲む気はない。諦めて帰ろうとした私だったけど、急に扉が開く。

「わっ!!」

「申し訳ありません。中へお入りください」

驚いた私にローデリヒさんは頭を下げ、素早く私からかばんを受け取る。

「あの、まだやっていないんじゃ……」

「わざとですよ。あなたとゆっくりお話がしたかったので」

いたずらっ子のようにローデリヒさんは笑う。確かに、いつも私はカウンターに座ってローデリヒさんと話しているけど、お客さんが入って来たり注文があったりと忙しい。
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