俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「…………私は彼女を泣かせてばかりだな………」
葵羽は彼女に渡された袋を手に持ち、それを見つめながらそう独り呟いた。
そう、独り言のつもりだった。
けれど、その言葉に返事が返ってきた。
「そう思ってんなら泣かせるなよ」
ハッとして声がした方を見る。
先ほど、彩華が走り去った方向から一人の男が歩いてきた。背は彩華より少し高いぐらいで、見た目からして若い。少し幼さが残る顔だったが、その男は葵羽を睨み付けていた。まるで、野犬のように警戒し、そして噛みついてくるかのようだった。
「…………あなたは、先ほど店で彩華さんと一緒に居た………。つけてきたんですか」
「あんな状態の2人を放っておけるほど、悪い人間じゃないんでね」
「彩華さんが心配だったのでしょう?本当に彼女が好きなんですね」
「………あぁ、好きだよ。悪いかよ」
その男の一言で葵羽は「この男は自分より強いな」とわかった。
自分の気持ちをはっきりと言える。それが自分の弱い部分だとしても、堂々と言葉に出せているのだ。
自分よりはるかに優れている。そう思えた。
こんな男からの告白を断って、彩華は自分の元へと来たのだ。彼女は男の見る目がないな、なんて思えて笑えてきてしまう。
何も答えない葵羽を見て、その男は言葉を紡ぎ続けた。