俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
男の話しを頭の中で反芻する。
ハッとさせられた事は沢山あった。
「彩華はおまえを信じている」その言葉は、わかっていた事だけれど、声にされると胸に刺さるものだった。
彩華は信じてくれていた。
それなのに、自分はどうだ?
それを考えると今までの行動、そして、先ほどの言動。1番愛しい人である彩華を全く信用してないものだった。
それを葵羽から突きつけられた彼女はどんなにショックを受けた事か。
もし、彩華に同じように言われていたら。………その方が葵羽はショックを受けなかったかもしれない。自分は愛していると伝えながらも、彼女を信じずに言葉だけで「愛している」と伝える。それがどんなに不安で、切ないことなのか。
彩華ならば、どんな自分でも愛してくれるなずだと思っていたのかもしれない。それはその通りだ。けれど、彼女の気持ちは、想いはどうなるのか。
葵羽は、ハーッと深く息を吐いた。
すると、いつの間に冷えていたのか、口から白息(しらいき)が出た。
何気なく彼女から渡された紙袋を見て、中身を取り出した。緑と赤のクリスマスカラーのリボンでラッピングされたものが出てきた。
彩華からのクリスマスプレゼント。
彼女はもう準備してくれていたのだ。クリスマスのデートを楽しみにしていてくれたのだろうか。それを思うと、切ない気持ちになる。
ガサガサと袋から箱を取り出す。すると、そこにはメッセージカードがあった。
葵羽は、そのカードを裏返すと、彼女の一言のメッセージが添えられていた。
『初めての恋人になってくれたのが葵羽さんでよかったです。大好きです』
そのメッセージを見た途端に、目頭が熱くなり、鼻がツンッとした。
あぁ、やはり彩華は自分を愛してくれている。
それが全てではないか。
箱の中からは、シンプルや革製のキーケースが出てきた。だが、中を見るとそこには鍵盤が描かれた生地がプリントされていた。
彼女はよく自分を見ていてくれた。
葵羽はそのプレゼントを大切にしまい、裏路地を歩き始めた。
怖がる必要はない。
そう心に決めた葵羽の向かう場所は1つしかなかった。