俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「彩華さんっ!」
するの、葵羽の声が静かな道に響いた。彼が車から出てきて、彩華に駆け寄ったのだ。
「………葵羽さん………」
「………先ほどは、すみませんでした。私が、焦りすぎていました。彩華さんを心配させた上、傷つけさせてしまいました………」
「………あの、私は………」
「彩華さんに、これを」
葵羽は、コートのポケットから、1枚の紙を取り出して渡した。暗くてよくわからないが、何かのチケットのようだった。
「これは………?」
「ここに来て欲しいのです。この日、この場所で待っています。………そして、彩華さんに全てをお話したいです」
「…………はい」
彼のとても真剣な眼差し、そして言葉に、彩華はしっかりと頷いた。
彩華の気持ちが伝わったのだろう。それがとても嬉しかった。そして、葵羽が別れるではなく自分と向き合ってくれる事に、彩華は安心した。
彼からどんな話しをされるかはわからない。
けれど、葵羽との距離が少し縮んだように感じられて、安堵の笑みを浮かべた。
すると、葵羽は彩華を道路の壁に隠すように、突然抱きしめた。彩華の体がよろめいて、コンクリートの壁に肩がぶつかる。けれど、頭や腰は彼が待っていてくれたのか、ガードされている。
夜中で人通りが少ない道といえど、いつ誰かが通るかわからない公道だ。
彩華はそんな場所で抱きしめられてしまった事に驚き、声を上げた。