俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
それから数日後。
仕事が終わり、1度帰宅し着替えなど済ませた後に急いでコンサート会場に向かった。
電車を乗り継ぎ、到着した場所には沢山のお客さんが開演を待っていた。ほとんどのお客さんが女性であるが、年齢層は幅広かった。もちろん、男性も居た。
会場内に入ると、すぐに目についたのがステージの中央にある一台のグランドピアノだった。
それを見た瞬間に、彩華はドキッとした。
彩華は胸の高鳴りを押さえるようにゆっくりと呼吸を整えながら、自分の席を探した。
すると、中央のとても見やすい席だというのがわかり、更に緊張してしまう。
もしかして………という考えが頭をよぎる。
開演までの数十分が彩華にとって、とても長く感じられた。
緒注意のアナウンスや、開演5分前のブザーの音も、彩華の耳にはほとんど入ってこないぐらい、ドクンドクンッという大きな鼓動が聞こえていたのだ。
客席の照明がゆっくりと落ち、ステージが明るく照らされる。特に明るい光がピアノに射し込まれ、黒い宝石のようにキラキラ輝いていた。すると、ステージ袖からカツンカツンッと足音が響いた。このコンサートと主役が登場するとわかり、お客さん達が息を飲んで登場してくる人物を今か今かと待ちわびている。そんな雰囲気を彩華は肌で感じていた。
ドクンドクンッという音は次第に大きくなった。