俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 会場を出ると、彼のCD販売もされており、覗いて見ると数種類のCDが並んでいた。どれも、彼の顔などは写っておらず、真っ黒な紙に白い文字でタイトルと「エリック」の名前が印刷されているだけだった。その中に「ドビュッシー」と書いてあるものを見つけ、彩華は思わず手に取ってしまう。


 「今日はドビュッシーの曲が多かったですよね」
 「え、あ……そうですね」
 「エリックさん、突然演奏する曲を変えたそうですよね。ドビュッシーお好きなんですかね。こちらのCDもとても素敵ですよ」


 CDを売っていたスタッフがそんな話しをしてくれた。その話しが彩華にとってはとても嬉しいもので、気づくとそのCDを購入してしまっていた。

 会場から出た後に、葵羽にチケットのお礼のメッセージを送ろうとして、スマホの電源を入れるけれど、彼に何と伝えればいいのか、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。
 しばらく、メッセージ画面とにらめっこをした後、彩華はハーッとため息をついて画面を閉じて、スマホをバックの中に閉まった。





 夜になると一気に寒さが増す冬の日。
 彩華は身を縮ませながら駅まで歩いた。葵羽へのメッセージの事で頭がいっぱいになっており、気づくと電車のホームに立っており、丁度来た電車へと乗り込んだのだった。

 葵羽へのメッセージを打ち込んでは消して、また打っての繰り返しでなかなか良い言葉が浮かんで来なかった。
 そんな事をしているうちに、ブブッと持っていたスマホが震えた。葵羽の方からメッセージが届いたのだ。


 『今、どちらに居ますか?』
 
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