俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
急いでいるのだろうか?
彼には珍しく用件だけメッセージだった。彩華はすぐに「今日はお招きありがとうございました。とても素敵なコンサートでした。今は電車に乗っています」と返事をすると、すぐに既読になった。返事もすぐに来る。
『もう少し時間がかかってしまいますが、今夜お時間くれませんか?最寄りの駅でも、自宅でも向かいに行きます。』
そんなメッセージが届いた。
彩華は少し悩んだ後に、彼に返事をする。
「疲れているのに、ありがとうございます。駅近くのお店で待っています」
と返事をした。すると、『ありがとうございます。待っていて下さい』と彼から返事が来たので、彩華はスマホを閉じてバックに入れた。
そして、コンサートの余韻に浸る。
彼の生のピアノの迫力はとても素晴らしく、1回聞いてしまうと、また聞きたいと思ってしまう。
そんな素敵な仕事なのに何故、秘密にしていたのだろうか。それが彩華にはわからなかった。けれど、これから彼は教えてくれるつもりなのだろう。
彼が秘密にしていたことを知れる。
それは嬉しいことだけれど、やはり緊張してしまう。彩華の体が強張ってくるのがわかった。体に力が入ったからだろうか。その瞬間、彩華のお腹が「ぐぅー」と小さく鳴った。電車の音で周りには聞こえていないだろうが、コンサートの時に鳴らなくてよかったと彩華は顔を赤くした。
仕事が終わってからも食事をせずに会場まで来てしまっていた。彩華は葵羽を待っている間、カフェで軽食をとりながら過ごすことに決めたのだった。