俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
葵羽の部屋はとても綺麗だった。
柔らかいフローリングの床に、木の温もりが感じられる家具が置いてあった。
リビングには真っ白のソファが置いてあり、窓はとても大きかった。今はカーテンが閉められているけれど、景色はとても良いのだろうなと彩華は思った。
「珈琲出しますね。インスタントしかありませんが………」
「あ、ありがとうございます。私も手伝います」
「いいんですよ。お客さんなんですから、ゆっくりしててくださいね」
「………はい」
葵羽にそう言われ、彩華は緊張しながら白いソファに座った。
目の前には大きなテレビが置かれ、その隣には沢山の本やDVD、CDなどが並んでいる棚があった。すべて音楽に関係するものばかりで、彼がどんなに音楽が好きで、学んでいるのかがわかるものだった。
テーブルの上には、沢山の書き込みがされた楽譜も置いてあった。
「すみません、散らかっていて」
温かい珈琲を入れたカップを持って来た葵羽はテーブルの上の楽譜をしまい、テーブルの上に珈琲を置いた。
「いえ、ありがとうございます」
彩華は、一口珈琲を飲むと冷えた体の中が温まるのを感じた。それだけで顔の緊張がほぐれてていくようだった。
そんな彩華を見て、葵羽は少し安心したように微笑んだ。
「彩華さん、僕の話しを聞いてくれますか。………楽しい話しではないですし、たぶん不快な思いをさせてしまうかもしれません」
「…………聞かせてください。葵羽さん。私、葵羽さんの事、たくさん知っていきたいんです」
彩華はソファに置かれた彼の手に、自分の手を重ねる。葵羽は優しく微笑んだ後、「ありがとうございます」と微笑んだ。
葵羽は彩華と手を繋いだまま話しを始めた。
彼の昔と、今の気持ち。
それを彩華はやっと知ることが出来るのだった。