俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「………あいつは、おまえと結婚したかったんだな。………そう言ってた」
「え………」
「おまえは、俺の大切なものを取ったのか?」
「………そんな違うよ、兄さん!俺は………」
「もう、おまえの顔を見たくない」
とても低い声だった。
怒りはなく、ただ何にも興味がない無気力な声。けれど、葵羽を拒絶し、軽蔑しているのがわかった。
ペタペタッと濡れた体のまま廊下を歩き、葵羽の隣を通り過ぎていく。
「光にい!そのまま入っちゃだめだよ!風邪ひくよ」
「………」
日和がタオルを持ってきて、光矢の体を拭いている。それでも光矢はゆっくりと歩き続け2人は光矢の部屋に入ってしまった。
葵羽はその場から動けなくなった。
大好きで尊敬していた光矢の希望を奪ってしまった。憧れていた兄に軽蔑され、嫌われた。
兄のおかげで、成長できた。兄のために、立派になろう。そう思っていた。
そんな思いが、ガラガラと音をたてて崩れ落ちる。
自分は兄の1番大切なモノを奪ってしまったのだ。
その後、自分が何をしたのか覚えていなかった。日和に聞くと、気づくと客間に寝ていたと言っていたので、ショックのあまり死んだように寝ていたのかもしれない。
その後、光矢は2人の前から忽然と消えたのだ。