俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「………では、どうして私の恋人になってくれたのですか?」
女の人が怖いはずならば、恋人など作ろうとは思わなかったはずだ。
彩華の気持ちに気づいていたとしても、それを無視するか気づかないフリを続けていればいいのだろう。
けれど、こうやって彼は彩華の恋人になってくれた。
その心の変化があった事が、彩華は知りたかった。
すると、やっとの事で葵羽は彩華の方を見てくれた。そこには、遠い目も寂しそうな雰囲気も消えていた。
「彩華さんに会ってから、雰囲気がとても柔らかくて素敵な人だと思いました。けれど、彩華さんの言う通り、恋人になりたいとは全く考えられませんでした。こんなイイ人でも何を考えているかわからない。………私の正体を知っていて、ここに来ているだけかもしれない。そんな風に思いました。…………はじめは」
「え…………」
彼の言葉はとても悲しくて、今は違うとわかっていても目を閉じて耳を塞ぎたくなってしまった。けれど、葵羽の最後の言葉を聞いて、目を大きくすると、葵羽はにっこりと微笑んだ。
「そう思っていました。けれど………あなたと会って日々過ごしていくうちに、この方ならば信じられるのではないか、と思ってしまったんです。子ども達と純粋に外を走り回り、汚れる事と疲れる事も気にせずに子どもたちとの時間を楽しむ。そんなあなたの子どものような笑顔と、優しい眼差しに惹かれました。この人は違う。そう思えたんです。………それに、私は寂しかったのでしょうね。大切な家族を3人も亡くした。そして、夢にも自信がなくなっていたんです。自分を見てくれている人は、近寄ってくる人はみんな地位やお金目的にしか見えなくなっていたんです。だから、弟の日和しか信じられる人がいなかったのです」
「……………」
「だから、あなたに少しずつ惹かれていたのに気づきました。けれど、怖くて前に進めなかった。…………けれど、あの場面を見た瞬間に私はあなたが目の前からいなくなると思ったら、動いてしまったんです」
「………祈夜くんと会っていたのを見た時ですね」
彩華の言葉に葵羽は頷き、「そうです」と答えてくれた。