俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「彩華さんが知らない男と手を繋いで歩いている所を見た瞬間、焦りと悲しみに襲われました。彼女には恋人がいたのだろうか?いや、そうは見えない。では、彩華さんに惹かれている男が自分の他にもいるのだ。そうわかったんです。………誰かに取られてしまう。それは嫌だ。そう思って、彩華に次に会った時に想いを告げてしまったのです」
「………私は、嬉しかったです。好きだった葵羽さんが、自分と同じ気持ちだったとわかって。………とても嬉しかったんです………」
「それがわかって安心しました。少し期待はしていたのです。彩華さんは自分に好意を持ってくれているのかな、と……。それでも、踏み込めなかったのは自分の弱さのせいです。悔しいですが、その祈夜という男性に感謝しなければいけないですね」
「………それを言ったら彼は怒りそうですね」
「それは、間違いないですね」
彩華がクスクスと笑うと、葵羽もつられて笑顔を見せた。
その後、彩華は葵羽の顔を見つめた。
「話してくれて、ありがとうございます。葵羽さんにとって、辛いことのはずで言葉にするのは嫌だったのかなってわかりました。それなのに、私に話そうと思ってくれた気持ちが、嬉しいです」
「………遅くなってしまいましたが………」
「お兄様の婚約者さんの言えない思いは、葵羽さんやお兄様を傷つけてしまう、酷いものだったと思います。………けど、本心は伝えずらいですよね」
「………それは、そうだね……」
「私も、葵羽さんに言えなかった想いがあります。裏の顔があると思います」
「え…………」
彩華の言葉に、葵羽は動揺を見せた。当たり前の事だ。今まで苦しめられてきた女性の裏の顔。それが彩華にもあると言われたのだ。葵羽は驚いた様子で彩華を見つめた。
彩華は微笑むと、葵羽に抱きついた。
葵羽は更に驚いたようだが、彩華は残念ながらその表情は見られない。
恥ずかしさを隠すように彼の胸に自分の顔をうずめたからだ。