俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「秘密を打ち明けても、彩華さんは彩華さんのままだったから、もう素の自分を見せてしまってるのかな。………敬語で話さないのは、今は弟と数人の友人だけだから。何だか嬉しいですね」
 「私も嬉しいです」
 「お互いにゆっくりと本当の自分を見せ合っていきましょう。……私も敬語と普通の言葉が混ざったり、俺とか私とか言ってしまうけど、直します」
 

 困ったように笑う葵羽を見て、彩華は少しホッとした。
 昨日の話しで、彼の傷は大きいと知ったし、話した事で昔の事を思い出して辛い思いをさせてはいないかと心配になっていたのだ。
 けれど、こうやって先を見据えた話しをしてくれる。そして、そこには自分も居るのだと思えて、彩華は嬉しかった。


 「あの、1つ気になったんですけど、どうしてエリックという名前なんですか?」
 「顔で私だとバレるのも避けたかったので仮面をつけることにしたんです。ですから、オペラ座の怪人の名前にしたんです。ミステリアスの雰囲気もいいかなと思いまして」
 「なるほど。そういう意味の名前だったんですね」
 「今は神主の仕事もしているので、音楽活動に集中出来てないのですが、あと3ヶ月だけなので………」
 「え、神主さん辞めてしまうのですか?」


 驚いた声をあげると葵羽は「えぇ」と少し残念そうな返事をした。


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