俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「祈夜くん!?」
「あ………美保子さん。どうも」
「こんな所で会うなんて、嬉しいー!」
突然、若い女性が祈夜の事を見つけて話しかけてきた。祈夜はその女性を名前で呼び、笑顔で話をしている。同じ年代だから、同級生だろうか?
「あ、美保子さんは兄貴の店のお客さん。この人は俺の恋人」
「初めまして、彩華です」
「え、祈夜くん彼女さんいたのー!?」
「まぁ、最近……」
彼がお客に恋人だと紹介してくれるのはとても嬉しかった。彩華は年上だというのに、顔が赤くなっている事を自覚した。
けれど、美保子と呼ばれたお客は、大きな声を上げて驚いた様子だった。
「お客さん達知ったら驚くよ!………わぁー、嬉しいけど何だか悲しい……」
「何言ってんだか……兄貴ももう少しで帰ってくるから会いに行ってあげて」
「そうなの?わかった!」
美保子は手をブンブンッと振って、一緒に来ていただろう女友達の元へと戻っていった。
彩華は小さく頭を下げて彼女を見送った。
「悪い。兄貴の客だから………」
「でも悲しいって………祈夜くん、人気あるんだ」
「そんなわけない」
自分がどんな表情をしてしまっているのか彩華にはわからなかった。けれど、祈夜は困った表情で慰めようとしているのを見ると、きっと寂しそうだったり、むくれているのだろう。
これが、嫉妬という感情なのだろう。
祈夜は彩華の頭をポンポンと撫でる。
「あの人はお客で、彩華は恋人。俺にとってお前は特別」
「………特別」
「顔ニヤけてるぞ」
「………そんな事ないよ」
「嬉しいときは嬉しいって言った方がいいぞ」
「……もう!……祈夜くんは余裕なんだから。年下とは思えないわ」
「ははは」
「否定しないだね」
さっきまでの嫉妬心はどこに行ったのだろうか。
彼の一言でその時の不安はなくなってしまった。祈夜ならば大丈夫。
そう思った。
そう、その時、は…………。