俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「祈夜くーん!この間ぶりだね」
「………あぁ……どーも」
肩の出たニットワンピースを着た女性が、祈夜の肩をトントンと叩き、顔を覗き込んできた。そこに居たのは、先日大型テーマパークで会ったお客の美保子だった。
彩華も会釈をすると、「あ、彼女さんも!こんばんはー」と、手を振った。その言葉が店内に響き渡った瞬間、女性達の視線を一斉に浴びた気がした。彩華は驚き、思わず肩が上がってしまった。「え、今、彼女って言った?」「月夜くん、あの子だれー?」「祈夜くんの彼女ねー」と、コソコソと話をする声が耳に入り、彩華は思わずうつ向いてしまう。
月夜のお客さんは皆華やかで、とても綺麗だった。自分が似合う着飾り方を知っているのか、キラキラして自信に溢れているようだった。
他の人と自分を比べるのは良くないとはわかっている。けれどもやはり目の前に綺麗な人が居たら、悲しくなってしまうのも事実だった。
「今、彼女とデート中だから。話しかけないで」
「………え、でも、私も祈夜くんと話したい」
「いや、ここホストクラブとかじゃないし、俺は今ここの客で働いてないから」
「そんな事言わないでよー!祈夜くんは相変わらず意地悪なんだから」
祈夜は美保子にしっかりと断りを入れたけれど、彼女は諦めきれないようで、何度も誘ってくる。祈夜の表情が雲ってくるのも気にしていないのか、気づいていないのか。
彩華の方がハラハラとしてしまう。
すると、祈夜は大きくため息をついた後に、ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。
「………じゃあいいよ。俺たちが出てくから」
「え………」