俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 祈夜はズカズカとカウンターに立っている月夜の元に行き、「これ会計分」とお金を渡すと、彩華の元に戻り「家に行こう」と帰るよう促した。「う、うん………」と、返事をしながら
帰る準備をする。彩華は恐る恐る美保子を見ると、目がつり上がり怒りを隠しきれない表情をしていた。

 「………祈夜くん!」
 「じゃあ、ごゆっくり」


 祈夜の名前を呼んで引き留めた美保子に軽い視線を送った後、祈夜はそう吐き捨てるように美保子に言うと、祈夜は彩華の手を取って店を出た。
 彩華が1度後ろを振り替えると女性客は唖然とし、月夜は苦笑しながら手を振っていたのだった。


 

 足早く歩く祈夜の後ろを早足て歩く。
 何かを考えているのか、祈夜は全く彩華の方を向いてくれなかった。


 「祈夜くんっ!」


 しばらく歩いた後、彩華が彼を呼ぶとハッとした様子で後ろを振り向いた。


 「悪い……歩くの早かったな。イライラしてて早く家に帰りたかった」
 「うん………大丈夫?」
 「せっかく店に来てくれたのに悪いな」
 「ううん………大丈夫だよ。祈夜くんが私の事紹介してくれて、嬉しかった」
 「…………本当はイヤなんだ………。あのホストだった頃の客がいるせいで、おやじ達の常連客がいきにくくなってる。もちろん、俺だって………」
 「…………祈夜くん」


 祈夜は、今の店の現状を悩んでいるようだった。お客が来てくれなければ店は潰れてしまう。しかし、月夜が目的で会いに来る女性のマナーの問題で他の客が迷惑している。
 難しい問題だなと思ってしまう。


 「お兄さんは何て言ってるの?」
 「………迷ってる。だけど、お客さんが来てくれるのは嬉しいらしい」
 「そっか………」


 彩華は何と言えばいいのかわからずに、彼の手を優しく握りしめる。すると、「悪い。変な話したな」と、祈夜は彩華に謝罪した。


 その後、彩華の家に行き2人の時間だけの穏やかな時間を過ごした。

 けれど、彩華には月祈と祈夜の表情が忘れられずに居たのだった。


 それに、月祈が好きな客は確かに多かったけれど、祈夜に向けられている視線も確かにあった。祈夜の彼女だと美保子が店内で言った瞬間、悲しむ人や彩華を睨み付ける女性が居たのに彩華は気づいていた。
 

 「やっぱり祈夜くんだってモテるじゃない………あんな事があったのに、嫉妬しているなんて………醜いな」


 彼の寝顔を見つめながら、彩華はそう呟いたのだった。



 
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