俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
そう言って庇ってくれたのは、カウンターから出てきた月夜だった。彩華を見て、申し訳なさそうに眉を下げている。
けれど、その表情さえも彼女達は受け入れる事が出来ないようで、月夜の話を聞いてもざわつくだけだった。
どうやら、彩華は月夜と繋がりをもつために祈夜と交際をしたのではないかと思われているようだった。だが、もちろんそんな事はない。
完全に勘違いをされている。
彩華も必死に説明するが言い訳に聞こえてしまうようだった。
すると、カラカランと玄関のベルが鳴った。
オープンの時間になったので、常連の客が入店してきたのだ。
月夜は咄嗟に「いらっしゃいませ」と席に案内するけれど、彩華との話が終わっていないと退かないつもりでまだ店内で立っている。
「それでは、何をお話していたのですか?」
「それは………」
「目的などなかったのですよね。月夜さんと話せればそれで良かったのでは?」
「もうその話しは…………」
「そうでなければ、祈夜さんと付き合うはずなんてないですよね?!」
月夜が止めに入ってくれたのだが、彩華と対峙していた彼女の最後の言葉。
それだけは、彩華が無視する事は出来なかった。
勘違いをしてしまうのも仕方がないかもしれない。自分が月夜と2人きりで話しをしてしまった事が勘違いを生んだのかもしれない。それは、彼女達にも月夜、そして祈夜にも申し訳ないと思う。
けれど、彩華は祈夜と恋人になった事を否定されるのだけは許せなかった。
祈夜をバカにした言葉に、頭に血が上るのを感じた。