俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
女が持っていたブランドものチェーンバックを彩華に向けて投げ回したのだ。チェーンの部分を持って、鞄を彩華に向けて投げつけた。が、勢いがよすぎたのか、チェーンの持ち手の2つのうち1つが女の手から離れた。それは重さがあるため鞭のように早いスピードで彩華に顔に向けて飛びこんできた。
彩華はもう避けられないとわかり、咄嗟に目を閉じた。それと同時にバックとバックのチェーンが思いきり顔に当たり、その衝撃から彩華は後ろに倒れた。
驚きの後に左目の脇がジンジンと痛み、思わず手でその部分を当てしまう。痛さから声煮ならない苦痛の呼吸が漏れる。
「あ、あなたが悪いのよ!本当の事を言わないで嘘ばかりつくから………」
女が想像していたよりも大事になってしまったので、彼女も驚いたのだろう。声から動揺しているのは感じ取れたが、自分の行為に非があったことは認めるつもりはないようだった。
「大丈夫!?彩華さんっ!!誰か、氷を持ってきて」
月夜は近くにいたスタッフに素早く指示を送ると、彩華に駆け寄った。そして、彩華の顔を見つめた。痛みから涙が出て、彼の顔はぼやけて見えたけれど、その表情には悲しみと焦りが滲んでいるのがわかった。
「腫れてるね……でも傷にはなってないみたい。目は開く?」
「はい………」
「とりあえず、病院に行ってみよう。近くの病院ならまだ診てくれるはずだ」
「だ、大丈夫ですよ。そんな対した怪我ではないんですから」
彩華はそう言って、よろよろと立ち上がろうとする。そんな彩華を見ていた客の女が、また声を上げた。