俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「………最低だな………私」
しかし、それに気づいていたのに声を掛けたのは彩華自身なのだ。
彩華自身も、自分がそんなに勝手な人間だったのかと、ショックを受けてしまっていた。好きな人が出来ると、こんなにも夢中になってしまうものなのかと知った。
だが、何よりも彼を傷つけてしまったかもしれない事が彩華には気がかりであった。
自分が嫌われるのはイヤだけれど、彼自身が「そんなに軽い男に見えるのか」と思っていないかが心配でもあった。
自分の気持ちを押さえられなかった事を恥ながらも、もし葵羽とまだ話す機会があるのであれば謝罪しなければと思っていた。
………だが、今は彼に会うのが怖かった。
次に葵羽に会ったときに、どんな顔をされるのか。彩華は怖かった。
俯きながら歩き、何度目かの大きなため息をついて、フッと顔を上げる。
すると、いつの間にか神社の最寄り駅の前に着いていた。
すると、目の前に沢山の人がごった返しており、これから先は全く前に進めない状況だった。
何かのスポーツ観戦かライブでもあったのだろうか。首からタオルをかけたり、薄着の人が目立っていた。そして、熱気が凄かった。周りの人と歌いながら踊っていたり、お酒を飲んで話をしているのだ。
彩華は早く駅に入ろうと、人の間を縫うように歩こうとするが、なかなか上手く行かない。
その時だった。彩華の体が何者かに引き寄せられ、そのままよろけてしまう。