俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方




 「彩華っ!!」


 飛び込むようにしてドアを開けて店に入る。すると、カウンター席に座る彩華に月夜が寄り添い、その周りにスタッフと常連客の夫婦が立っていた。突然走ってきた祈夜を見て、驚いた様子でこちらを見ていた。


 「祈夜くん!どうしたの?」
 「どうしたはこっちだ。怪我したって聞いた」
 「あ、僕が連絡しました。………心配だったので」
 「そうだったのか。祈夜、心配かけたね。俺が我慢出来なくて、その………またやってしまったんだ。それに、彩華ちゃんを巻き込んでしまったんだ」
 「そんな事………私が先に我慢出来なかっただけです」


 そんな風に彩華と月夜はお互いを庇い合っている。すると、常連客の老夫婦がニコニコしながら口を開いた。


 「このお2人は祈夜くんをバカにされて怒ったんだよ。本当にかっこよったんだ。君にも見せたかったよ」
 「あ、それは………」
 「幹さん、それは言わなくても」


 彩華と月夜は祈夜をちらりも見て、視線が合うと恥ずかしそうに苦笑した。


 「そうよ!とっても素敵だったのよ。私たちが月夜くんがやんちゃだった頃を知っているから、怒った姿を見ても何だか懐かしくなったわー。でも、最近店の雰囲気が気になってたから……月夜くんにあぁやって怒って貰えてすっきりしたわ」
 

 幹夫婦の奥さんが笑顔でそう言ってくれる。この夫婦は祈夜が生まれる前からの常連客で、祈夜の両親の古いお客だった。この夫婦も店の事を心配していたのだろう。安心した様子でそう語ったのを見て、兄が何がしたのかが想像出来てしまった。



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