俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「月夜さん、やんちゃだったんですか?」
 「あー……それは………」
 「昔コンビニの前とかに溜まってる不良少年だったんだろ?学校の鏡割ったり、バイク乗り回したり、金髪にしたり………」
 「祈夜、それ以上は止めてくれ。恥ずかしすぎる」


 そう言って片手で顔を覆う月夜を驚きの表情で見ているのは彩華だけだった。
 祈夜はともかく昔からの常連客やスタッフは、その事を知っているのだ。昔は散々迷惑をかけられたのだ、こうやって恥ずかしい思いをするぐらいはしてもらわないと、と月夜は何かある毎にこの話をして月夜を困らせていた。


 月夜は昔、優秀だったけれど何故か高校の頃から荒れ始めて大学もいかずにふらふらとしていた。社会人になる年にも全く働こうとしなかった頃に、両親はそろそろ店を辞めたいと話されたのだ。それまで遊んでいた月夜だったが、両親や店の事を考えるようになり、ホストをして店の改装資金を貯めて、しっかりと働くようになったのだ。勤めた店も悪くない所だったようで、しっかりとした接客の仕方を教えて貰ったようで、少しずつ月夜は変わっていったのだ。
 そこからは、今の月夜になった。もともと整っていた顔に清楚感が加わり、月夜は人気になった。怒りやすいところもなくなり、口調も優しく穏やかになっており、両親も祈夜も安心したのだった。
 けれど、時々我慢が出来ないぐらいに怒ってしまうと、昔の癖で口調が悪くなってしまうのだ。
 きっと、それが出てしまったのだろう。


 祈夜は、彩華を見て元気そうに笑っていたので、ホッとした。けれど、よくよく彼女を見ると手には氷水が入った袋を持っており、髪で隠れていた目の脇が赤く腫れているのにようやく気づいたのだ。


 「おいっ………彩華、その傷……」
 「あ………これは、大丈夫だよ。冷やしてれば治るから」
 「いいから見せろ」


 祈夜は彩華に近づき、彼女の顔を覗き込んだ。すると、目のすぐ脇がみみず腫になり、真っ赤に腫れて居た。そして、そちらの片目は少しだけ充血してるようにも見えた。


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