俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「………酷いな………何されたんだよ」
 「ホスト時代の女の子が振り回したバックのチェーンが彩華ちゃんの顔に当たったんだ。………守れなかった俺のせいだ。ごめん、彩華ちゃん、祈夜」


 そう言った後、祈夜が居ない時に何があったのかを詳しく教えて貰った。
 彩華が店の事を心配してくれていた事、自分を悪く言った奴に怒ってくれた事。それは月夜も嬉しかった。
 けれど、無茶はして欲しくないというのが、本音だった。彼女が怪我してしまったり、傷つけられるのが何よりも辛いのだ。

 
 「………彩華、ありがと」


 だが、口から出た言葉は、それとは全く違うものだった。
 彩華が自分のために、してくれたのだ。まずは嬉しかった気持ちを伝えたかった。彼女が自分を思ってくれたのが幸せだと思った事を。


 「ううん………来てくれてありがとう」


 傷つきながらも、嬉しそうに笑ってくれる。それが嬉しかったけれど、やはり視線は紅く腫れた部分に言ってしまう。


 「………けど、やりすぎだ。怪我するなんて」
 「………それはごめんなさい。………でも」
 「でも、じゃない!」
 「祈夜くんの意地悪」
 「意地悪じゃないだろ。子どもじゃないんだから………」


 彩華とそこまで話したところで、周りの視線に気づき、ハッとした。
 今までのやり取りを兄やスタッフ、そして常連客に見守られていたのだ。


 「お兄ちゃんは嬉しいよ。祈夜が幸せそうで」
 「っっ!!」


 月夜の言葉で、彩華と祈夜が真っ赤になったのは言うまでもなかった。



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