俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
祈夜の気持ちは痛いほどわかる。
もし、自分がされたらどう思うか。彩華が子ども達によく教えている言葉だ。それを自分自身に問い掛けてみる。すると、祈夜と同じ気持ちになる。
けれど、それと同時に我慢出来ないだろうとも思うのだ。
自分の愛しい人が、目の前で知りもしない人に貶され馬鹿にされる。それはとてもとても悔しいものだった。
「………祈夜くんの気持ちもわかる。けど、私我慢出来ないかもしれない。祈夜くんの事、大好きだから」
「でも………」
「だから、祈夜くんの前では我慢しないね」
「………え?」
「とっても悔しかったよ。祈夜くんはお兄さんの事やご両親の店を大切にしたいと思っているだけなのに。そして、店の手伝いをしてるだけなのに………とっても悔しかった!優しくてかっこいいんだよって言いたかった!」
「あ、彩華?」
「言い合いになってしまったけど、まだまだ彼女達に言いたいことあったんだよ!……でも、やっぱり少し痛かったし、ドキドキしたし………怖かったんだ。わかってもらえないかもしれないけど、少しでもいいから祈夜くんの事、違う目線で見て欲しいって思ったんだ」
人に怒るのはとても怖いし、体力も使う。
違う意見を言う相手に「違うよ」と伝えるのも緊張する。
今までは逃げてきた方かもしれない。
けれど、あの時は逃げようなんて思わなかったのだ。
自分の事なら我慢出来たし、何て思われてもいい。
けれど、祈夜の事は違うと思ったのだ。
その時の鋭い視線や店内のピリピリとした雰囲気を思い出しては、目に涙が浮かびそうになる。目の脇もヒリヒリ痛む。
けれど、彩華は祈夜に向かってにっこりと微笑みかけた。
あなたとあなたの大切な守れて良かったという気持ちを込めて。
すると、祈夜は目を見開いたけれどすぐに優しく彩華を見つめる。それは少し前に兄である月夜について語っていた時と同じ、キラキラとした瞳に見えた。