俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方


 「彩華はすごい………な。おまえと会えてよかった」
 「え……なんで………」
 「俺の前では素直になって。受け止める、から」


 「ありがとう」と言う彼への言葉は祈夜の小さなキスに食べられてしまう。
 触れるだけの少し焦れったいキスだった。けれど、それが彩華を安心させたのだ。


 「なぁ……今日泊まっていいか?……何にもしないから」
 「何にもしないの?」
 「………キスぐらいはするけど……今日なんかそういう感じじゃない」
 「……私も一緒にくっついて寝たいな」
 「じゃあ、泊まる」 


 鼻同士が当たるほど近づきながら、彩華と祈夜はクスクスと微笑み合う。
 祈夜はもう一度キスをするが、今度は唇ではなく、彩華の目の脇。怪我をしてガーゼで覆われた場所だった。


 「ありがとう。兄貴と両親の分も含めて俺からお礼するから」
 「……いいのに」
 「俺の事いらないのかよ」
 「いるけど」
 「じゃあ、貰っとけ」


 そう言うと祈夜にまた強く抱きしめられる。
 彼の香りと体温を感じながら彩華は瞳を閉じた。

 このまま、眠ってしまったらどんなに幸せなのだろうか。
 それもいいかもしれないな。


 そんな風に、彩華は思って祈夜の胸に自分の顔をうずめた。








< 185 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop