俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「彩華はすごい………な。おまえと会えてよかった」
「え……なんで………」
「俺の前では素直になって。受け止める、から」
「ありがとう」と言う彼への言葉は祈夜の小さなキスに食べられてしまう。
触れるだけの少し焦れったいキスだった。けれど、それが彩華を安心させたのだ。
「なぁ……今日泊まっていいか?……何にもしないから」
「何にもしないの?」
「………キスぐらいはするけど……今日なんかそういう感じじゃない」
「……私も一緒にくっついて寝たいな」
「じゃあ、泊まる」
鼻同士が当たるほど近づきながら、彩華と祈夜はクスクスと微笑み合う。
祈夜はもう一度キスをするが、今度は唇ではなく、彩華の目の脇。怪我をしてガーゼで覆われた場所だった。
「ありがとう。兄貴と両親の分も含めて俺からお礼するから」
「……いいのに」
「俺の事いらないのかよ」
「いるけど」
「じゃあ、貰っとけ」
そう言うと祈夜にまた強く抱きしめられる。
彼の香りと体温を感じながら彩華は瞳を閉じた。
このまま、眠ってしまったらどんなに幸せなのだろうか。
それもいいかもしれないな。
そんな風に、彩華は思って祈夜の胸に自分の顔をうずめた。