俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
それ以来、自分が少女漫画を描いている事を周りには秘密にするようになったのだ。
専門学校で絵の勉強をするようになった頃、祈夜は運良くとある漫画大賞に投稿したところ見事受賞し、学生の内からデビューする事となった。
そのため、卒業した後からずっと漫画を描き続けそれなりに売り上げを伸ばして生活を安定させてきた。
恋愛などしたことはなかった。
自分の趣味や仕事をバカにされるのが怖かったからだと、祈夜はわかっていた。恋愛をしたことがない、少女漫画かなんて……と自分でも可笑しくなるがそればっかりは仕方がない。自分の理想の恋愛だけは膨らんでいき、それを絵にすると瞬く間に人気作家になった。祈夜の漫画は女性視点のものもあれば、男性視点のものあり、それが面白いと好評だったようだ。それに名前から作家が男性だとわかる人も多く、「こんな恋愛漫画を描ける男性なんて、彼女が羨ましい」など言われたこともあったけれど、苦笑するしかなかった。
この仕事を認めてくれる恋人など見つかるのだろうか。そんな風に少し諦めながら生活している時に出会ったのが彩華だった。
彼女なら自分の仕事を認めてくれるだろうとわかっていたけれど、それでも不安になっていた。
祈夜に対して軽蔑した目で見てきた友人の視線が忘れられないのだ。
そんな時に予期せぬ出会いによって、彩華にバレてしまった。
けれど、祈夜の予想通りに彩華は全く気にする様子もなく「祈夜くんの漫画を見たいな」と言ってくれた。
それが祈夜にとってどんなに救いの言葉だったのか。
彼女は知るはずもないのだった。