俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
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祈夜となかなか会えなかったのは、締め切りが近かったからだと彼から教えてもらった。アシスタントが5人もいるらしいが、2人がインフルエンザになってしまい急に休みが入ってしまったそうだ。そのため、締め切りギリギリまで作業が終らないそうだ。
彩華と会った日はやっと仕事が終わり、ライバルである他の作家の漫画を見て勉強するために訪れたそうだ。
祈夜が仕事の話をする時は少し恥ずかしそうにしながらも、イキイキとしているのがわかり、彼が本当に漫画が好きなのだと伝わってきた。大好きな彼が好きなモノをやっと知る事が出来て、彩華も嬉しくなっていた。
「彩華……泣きすぎだろ」
「だって、このお話スッゴい感動するよー」
次の休日。
彩華は祈夜の家に来ていた。そして、約束通り「イリヤ」の漫画本を読ませてもらう事になっていた。
彼はすでに約10冊の漫画本を出版していた。学生向けの学校での恋愛漫画や、少し不思議な大人向けのものがあった。大人向けのものは完結しているからと先に読むように勧められたが、あまりに切なくドキドキする展開に、彩華は読み始めてからしばらくすると、物語に入り込んでしまい涙が止まらなくなってしまったのだ。
他の作家の漫画を隣で読んでいた祈夜は、突然泣き始めた彩華を見て、驚きながらも涙を拭いてくれる。