俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 祈夜はそういうと、彩華が持っていた漫画本を取り上げて「ばかだな……」と、苦笑した。そして、「少し待ってて」と、1度リビングから出ていくとすぐに何かを持って戻ってきた。
 彼は彩華の隣に座り、持ってきてくれたものを差し出した。それはスケッチブックだった。


 「次の連載で、………女性の肌のシーンをよく描くことになりそうなんだ。画家志望の男が、年上の女の裸体のスケッチをするところを描きたくて。もちろん、セックスのシーンもあるような大人っぽい話に挑戦してみたいだ。だから、そういう年齢指定の漫画本を片っ端から読んでたんだけど。どうも、そういうシーンばかりだし、何かリアルじゃなくて、迷ってて……って、まぁそんな感じの理由」


 そう言って、祈夜は彩華にスケッチブックを見るよう視線で促す。表紙を捲ると、様々な角度、そして姿勢の裸の女性が描かれていた。それは、彼の漫画のようなタッチではなく、スケッチだった。
 目線や髪の動き、そして肌質や骨格まで繊細に描写されており、とても儚い美しさを感じられた。


 「………とっても綺麗………」
 「………別に胸なんか大きくなくたっていいだろ。俺は彩華のがいい」
 「…………祈夜くんって本当に年下?そういう事さらりと言えちゃうなんて」
 「本当の事だし」


 かっこつけていても内心はドキドキしているのか、耳が赤くなっているのに気づいたのは彼には内緒だった。
 お世辞にも大きいとは言えない胸を持つ自分の恋人が、実は巨乳好きなのかと思い、少し切なくなってしまったが、勘違いだとわかり、彩華はホッとした。

 すると、祈夜は何故かクククッと笑い始めた。



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