俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
拗ねた口調でそう言うと、彩華の額にキスをした。彩華は驚き、体を引こうとするががっちりと腰に手を添えられているので逃げられない。
「今はダメだよ……」
「そうですよー、先生!仕事中ですよー!」
「いいなぁー。リアル雪音お姉様が彼女なんて」
「っっ………」
ガヤガヤと作業部屋から数人の男女が出てくる。その姿を見て、彩華は驚いた後に、「だから、言ったのに……」と祈夜を睨んだ。
今日は、祈夜のアシスタント達を招いての、祈夜の漫画連載のお祝い会だった。すでに連載はスタートしていたが、祈夜の仕事が落ち着くのを待っての開催だった。
祈夜が企画していた通りの漫画連載がスタートとなり、その漫画はすでに人気作となっており、毎回巻頭や表紙を飾るほどだった。1巻の発売もすでに決まっており、その予約も好評だと聞いていた。そのため、漫画の人気のお祝いがメインとなっていた。
そして、アシスタントが話していた「雪音お姉さん」とは、その漫画に出てくるヒロインの事だった。画家志望の主人公である学生と、社会人の雪音は、出会ってから雪音がモデルとなる事で関係が深まっていく話だった。恋人ではない相手に裸をスケッチされる心情や、スケッチをする学生の気持ちなどがリアルに表れていると好評だったのだ。そして、雪音が美形で優しいお姉さまキャラで「雪音お姉様」とネット上で話題となっている。その雪音は祈夜の恋人である彩華がモデルになっていると知っているアシスタント達は、彩華を「リアル雪音お姉様」と呼んでいたのだった。
彩華ももちろん祈夜の漫画本は読んでおり、雪音がとても綺麗に描かれているのを見て、「本当に自分がモデルなのだろうか?」と思ってしまうが、皆にそう言われると、恥ずかしいと思いつつも嬉しいと感じてしまった。