俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「これ、すごく美味しかったですっ」
「あぁ、それ上手いよな。どんな食事でも合うし」
「はい!おいしい……ジュースみたいにいっぱい飲めちゃいそう」
「あんま飲みすぎると酔うぞ。特に空きっ腹にはダメだ。俺は料理あんまり得意じゃないから簡単なもんだけだからな」
そう言って黒髪の男は、彩華の前に美味しそうな香りが漂ってくるチーズリゾットと、フルーツがトッピングされたフルーツサラダが置かれた。
「すごい…………おいしそうです!」
「そうかよ………」
「はい!いただきます」
彩華は、出来立てのリゾットをいただき「チーズが濃厚でおいしいっ!」と、感想を言いながら夢中で食べていた。お酒もドンドンと進み同じものをまた追加で注文したり、おすすめのカクテルも飲んでしまった。
彼はここの店の代理の店長をしているそうだ。彼の兄がここの店の店長で、時々ふらりと海外に旅行に行ってしまうそうだ。そんな時手伝っているのが、弟である彼。
料理などは他のスタッフがやっており、彼は開店の準備をしたり、スタッフの監視や急な休みがあったときの対応、閉店の片付けなどを任されているらしい。「夕飯食べに来てるだけだけどな」と、言って自分もジョッキにビールを入れて飲み始めていた。
初めて会った人とここまで話が出来るのは、お酒が入っているからなのか、不思議な出会いをしてしまったからなのか、それとも彼の人柄のせいなのかはわからない。
それでも、彩華は早く帰りたいとも思わずに、食事を楽しみながら彼と会話を交わしていた。
はずだった。