俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「あ………ごめんなさい。私、ウトウトしてしまって………。」
「酒作ってる間に寝るなよな。キングピーターは俺が飲んだ」
「え………そんな………」
彩華はテーブルの上に置いてある氷だけになったグラスを切なげに見つめた。すると、男は「飲み過ぎなんだからいいんだ」と言って彩華の手を取った。
「……え………」
「駅まで送る」
「でも、仕事中じゃ………」
「俺の仕事は開店準備。今日はスタッフも全員いるからいいんだよ」
そういうと、スタッフの一人に「少し外出る」と声を掛けて、男はズンズン歩いて行く。この店に来た時と同じように彩華は引っ張られるままに店を出ていく。
先程よりも、夜は深くなり辺りは真っ暗になってきた。この時期は暗くなると少し寒くなる。先ほどの温かさから一転して急に冷たい空気に当たり、彩華はブルッと体を震わせた。
「寒いか………?」
「あ………ううん。大丈夫です。あの、さっきのご飯とかカクテルのお金お支払いさせてください」
「いいよ………それぐらい。俺が勝手に連れてきたんだし。あれ、メニューにないものだから」
「…………でも、助けて貰った上に食事なんて………」
彩華は申し訳なさそうにそう言うと、男は後ろを向いたままだった体を彩華の正面に向けた。
まだ繁華街からは少し離れた遠い道。
行き交う人もほとんどいない。
車の音やどこかで電車が走る音が聞こえるけれど、聞こえるのはそれだけだった。