俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
相手の気持ちなどわからない。
好きになれないのは彩華自身の事だ。祈夜は違う。自分の考えを押し付けてしまった事に謝罪をすると、祈夜は「いいんだ。すぐに好きになるのは……まぁ、よく考えたらおかしいし怪しいよな」と、苦笑気味に笑った。
「………連絡先だけでも交換してくれないから。本当に俺が嫌だったらブロックしてくれて構わないから」
「うん…………」
2人の連絡先を交換することにした。
夜の道で2人で連絡先を交換する。きっとありふれた光景なはずなのに、彩華にとってはとても緊張する事だった。
女子高、女子大学、女性だけの職場。そんな環境で育った彩華にとって、連絡先の一覧に男の人の名前か並ぶのはとても珍しいことだった。
「ありがと……連絡する」
祈夜はスマホの画面にうつる彩華の連絡先を見て、また嬉しそうに微笑んでいた。
そんな姿を見ると、胸がきゅんとしてしまうのだった。
「駅まで送るよ」
「………ありがとう」
繋いだ手はそのままで2人は並んで夜道を歩く。先ほどまでは目の前に彼の背ががあった。けれど、今は違う。横を向けば彼の顔が見れらるのだ。
彩華はドクンドクンと身体中で自分の鼓動を聞き、緊張した雰囲気のまま駅まで2人で歩いた。
祈夜と離れた後も、それはしばらく続いていた。
「どうしよう………」
彩華は一人きりになってから、ずっと祈夜の事を考えては顔を赤くしていたのだった。