俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
すっかり機嫌が良くなったのか、祈夜は彩華の顔を覗き込んでニヤリと笑った。
彼の真っ黒でキラキラと光る瞳がとても綺麗だった。
祈夜の言葉は、悩んでいた彩華の心を軽くしてくれた。そして、素の自分を「可愛い」と言ってくれた。
そう、葵羽もそうだった。
それを思い出した瞬間、彩華はズキンッと胸が痛んだ。
彩華は葵羽と付き合っているわけではない。自分だけの片想いだ。けれど、こうやって2人の男性の間をフラフラと気持ちを揺られてしまうのはよくないように感じたのだ。
そして、祈夜は彩華に告白までしてくれているのだ。
自分の気持ちをしっかりと見つめて、早く決断しなければ。
彩華は繋がれた手を見つめながら、そう思った。
「ほら、腹減ってるだろ?今日はうちのスタッフのうまい飯にしよう」
「祈夜くんが作るんじゃないの?」
「俺はほとんど作らない。あの時は特別だったんだから感謝しろ」
そんな他愛もない話をしながら、並んで見世まで歩いていく。
この楽しい時間と、手の暖かさを今だけは浸っていよう。
彩華は微笑みながら彼との時間を過ごす事にした。
そんな所をあの人に見られていたとはこの時は全く気づくことはなかった。