俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 2人が気になると言ってしまったら、きっと嫌な女だと思われるだろう。
 けれど、彩華の中でゆらりゆらりと気持ちが揺れてしまうのが本音なのだ。

 彩華は、祈夜の方を見てゆっくりと言葉を紡いだ。


 「祈夜くんの事、本当に優しいと思うし、すごく助けられて………年下なのに頼りたいって思った。手を繋ぎたいなって今でも思ったりもするんだ。………でも、まだ気持ちの整理がつかなくて、自分の気持ちがわからないの。…………だから、まだそのお誘いには答えることが出来ません」
 「……………そうか」


 祈夜は怒るだろうか。呆れるだろうか。「もういい」と言って、彩華の前からいなくなってしまうだろうか。
 そう思って彼の言葉の続きを聞くのが怖くて仕方がなかった。
 

 けれど、彼は何故が嬉しそうにニッコリと笑い、こちらに手を伸ばしたのだ。


 「今日はそれ聞けただけでも嬉しい。俺の事少しは考えてくれてるなら。それに、俺もおまえと手繋ぎたかったし」
 「………ごめんなさい」
 「いいんだ。答えを急ぎすぎた。ほら、いくぞ!終電に間に合わないっ!」


 彩華は祈夜の手を取って走り出した。
 2人のシューズで走る音が街に響く。
 カツカツという女らしいヒールの音じゃない。タイトスカートで走れない、可愛らしい女の子じゃないかもしれない。
 けれど、こうやって彼の並んで走る時間も悪くない。

 そう思って思わず笑ってしまう。
 すると、祈夜も隣で笑ってくれる。

 そんな時間が彩華にはとても幸せに感じられたのだった。




 




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