俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
好きだな。
そう思える人と過ごす時間は特別で。
それが、両想いになって、恋人になった後はどうなってしまうのだろうか。幸せすぎて、泣いてしまうのではないかと彩華は思ってしまう。
けれど、1人になれば冷静になれる。
自分で選ばなければならないという事を。
ずっと気になっていた葵羽にしっかりと告白するのか。
それとも返事を待っていてくれている祈夜を選ぶのか。
どちらも選ばないのか。
そんな事を悩んでは、ため息と共に自分は恋愛に向いていないなと思ってしまう。
けれど、1度甘い時間を過ごしてしまうと、もっと近づきたい、一緒に笑っていたい。そんな風に思ってしまうのは贅沢なのだろうか。
自分には無理だと思っていた街を歩く恋人たちの幸せな姿。自分にもそんな事が出来るのだろうかと思ってしまう。
けれど、焦れば焦るほどに考えはまとまらずに終わってしまうのだった。
そんな時間にも終わりが来る。
事態が急展開したのだ。
それは最後に葵羽に会ってから1週間が経った頃だった。
いつものように仕事が終わり保育園を出て駅への道を歩いている時だった。
暗い夜道に誰かが立っているのがわかった。
始めは知らない人だろうと思ったけれど、近づくにつれてそれが誰なのかすぐにわかった。
街灯に照らされる金色とも銀色とも思える髪。背が高く細身の体。葵羽だった。
灰色のタートルネックのニットに黒のジャケット、ズボンという姿だ。葵羽に会う時はいつも神社の和装のため、彩華は驚いてしまった。モデルのように服を着こなし、暗闇に立つ姿はとてもかっこよかった。
「彩華先生」
「あ、葵羽さん………」