俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
葵羽は彩華を見つけると、こちらに駆けてきた。そして、ニッコリと「こんばんは。御仕事お疲れ様です」と挨拶をしてくれる。いつもと違う姿に彩華はドキドキとしてしまい、顔が赤くなってしまうのを感じた。今が夜でよかったと思った。
「彩華先生を待っていました」
「え………」
「もしお時間がありましたら、私の少し時間をくれませんか?」
いつものように穏やかに微笑む葵羽。
彼の話は何だろうか。この前、話が途中になったことだろうか。
彩華は、それがずっと気になっていたので、葵羽の問いかけに小さく頷いた。
「はい。前にお話しできなかったので、ぜひお話ししたいと思っていました」
「ありがとうございます。………よかったです。車を用意していますので、少し落ち着ける場所へ移動しましょうか」
彼の提案に頷き、彩華は近くに泊めてあった彼の車に乗った。白の大きな車は一目で高級車だとわかった。中は、ブラウンで統一されている。助手席のドアを開けててもらい中に入ると、彼の香水なのだろうか。ウッド系のいい香りがした。皮の椅子もとても座り心地がよかった。
「では、少しだけ移動しますね」
葵羽は、ゆっくりと車を発車させる。
彼らしい、相手を気遣う運転だった。
「突然すみませんでした。待ち伏せなんてしてしまって」
「いえ………葵羽さん、寒くなかったですか?」
「大丈夫ですよ。そんなに待っていませんから」
そう言っていたけれど、彼の指先が真っ白なのを彩華は気づいていた。
長い時間待っていてくれたのだろう。そう思うと、彩華は申し訳なかった。それと同時に彼がそこまでして自分に話したい事は何だろうかと気になってしまった。