俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「この間、彩華先生は軽率だったと言いましたが。それは、私がしている指輪を見て言ってくれたのですよね」
「……………はい。そうです」
突然、彩華が気になっていた話が始まる、ドキッとしてしまう。
葵羽はまっすぐに前を見て運転をしながら、「やはり、そうでしたか」と、苦笑した。
「………指輪をしているというのは大切な人がいるのだろうって事なのに、お食事に誘うなんて………すみませんでした」
「彩華先生はそんな事まで気にしてくれていたのですね。………ありがとうございます。確かにこの指輪は大切な人のものです」
「…………」
あぁ、やはり彼には大切な人がいるのだ。
それなのに、こうやって彩華が気にしていた事に気づきて声を掛けてくれた。
彼の優しさに感謝しながらも、もう葵羽の事は諦めなければならない。そう思った。
彼の優しさに惹かれ、子どもたちと共に遊ぶ少年のような笑顔、そして舞を披露した神秘的な姿、紳士的な言葉の数々に彩華は恋に落ちたのだ。
けれど、彼には特別な人がいる。それは自分ではない。
それがわかり、彩華は涙が出そうになるのをグッと堪えた。
けれど、葵羽は言葉の続きを発し続けた。