俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「あ、あのね………私、男の人と手を繋いだのなんて、きっと子どもの頃以来だったと思う。だから……祈夜くんが手を繋いで助けてくれたり、手を繋いでない夜の街を歩いたりしたのがとても嬉しかった。こんなに手を繋ぐってドキドキして幸せだなって思てるんだってわかったの………恋人たちが手を繋いでない歩く理由を教えてくれたのは、祈夜くんなんだよ。手を繋いでから始まった出会いだから………きっと、手を繋げばあなたの事を思い出すと思う」
彩華の言葉をジッと聞いていたい祈夜は、少しだけ微笑んでくれた。
「やっぱ、おまえ変なやつだな」
「変ってそんな事ないよ………」
「変だよ。………俺が夢中になっちゃうぐらいに変なやつだよ。彩華は………」
「…………ありがとう、祈夜くん。私と出会ってくれて」
「………店に飯食いに来いよ。」
祈夜の言葉の彩華は目を大きくして驚いた。
お店に来てもいいという事は、この出会いを終わりにするわけではないという事だ。
これからも、祈夜と会えるのだ。
大切な友達として。
「行ってもいいの!?嬉しいっ!」
「………あ、でも彼氏は絶対連れてくんな」
「ふふふ、わかった。」
「………フラれたら慰めてやるよ」
「付き合う前からそんな不吉なこと言わないでよ」
そう言って2人は向かい合って笑い合った。
好きな人にフラれた後、その相手との新しい恋をすぐに応援出来るものなのだろうか。
きっとなかなかできるものではないはずだ。それなのに、祈夜は微笑んでくれている。彼の優しさが伝わってきて、彩華は胸がチクリと痛んだ。
内心ではどう思っているのか、彩華にはわからない。悲しんでいるのか、怒っているのか。
けれど、そんな気持ちを癒せるのは彩華ではではない。彩華は、彼の幸せを願うことしか出来ないのだ。
今はそっと彼から離れて、しばらくしたらまた彼の店にお邪魔しようと心に決めた。
「好き」と言われる嬉しさと、手を繋ぐ幸せをくれた男の子。
祈夜は大切な友人になる。
そう、彩華は予感していたのだった。