俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「すみません………お待たせしてしまって」
「時間前ですし、気にしないでください。私も来たところです」
「……………」
「彩華先生?」
ポカンとしている彩華を見て、葵羽は顔をジッと見つめた。彼の視線を感じ、彩華はようやく自分が考え事をしてしまっていた事に気づいた。
「す、すみません!………本当にこういう会話をするんだなーと思ってしまって……」
「会話、ですか?」
「はい。………「待った?」「今来たところ」という会話です。物語だけなのかと……あ、でも友達同士ではしますよね………」
自分で話しをしながらも、動揺してしまっているのがわかる。
男の人と待ち合わせをしてデートというのが初めての経験の彩華にとって、全てが新鮮だった。
葵羽にとって、こんな挨拶は当たり前の事なのだろうと思いつつも、彩華にとっては嬉しいと感じてしまうのだった。
すると、葵羽はとても賑やかに微笑んだ。
「友達のそれと、恋人同士のそれでは雰囲気は全く違うものになりますよね」
「え………」
「さぁ、少し早いですがお店に入りしょうか。もう大丈夫か、聞いてきますね」
「あ、はい………」
さりげなく「恋人」と言ってしまうところが、大人の余裕なのだろうか。そんな風に思ってしまうだった。