俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 そう言って葵羽は笑った。
 その後も和やかに食事は進み、しばらくするとコーヒーとチーズケーキが運ばれてくる。
 甘いものが大好きな彩華は目を輝かせた。けれど、内心では少しずつ緊張してきてしまった。
 目の前の彼に、告白をしなおすようなものなのだ。美味しそうなチーズケーキを目の前にしても、何故だか食べたいとは思えなかった。
 そんな様子を見て、葵羽はにっこりと笑い優しく問いかけてくれる。


 「彩華先生のお話、聞かせていただけますか?」
 「はい………。」


 葵羽がせっかく作ってくれた機会だ。
 彩華は小さく息を吐いてから言葉を紡いだ。


 「………葵羽さんの事、ずっと考えていました。それで思ったんです。葵羽さんは初めて会ったときから、とても優しくて、紳士的で、それでいて何だか不思議な雰囲気だなって」
 「不思議、ですか?」


 彩華の言葉に驚いた様子でそう問いかけてきた葵羽にゆっくりと頷いてまた話を続ける。


 「上手く話せるかわからないんですけど。舞を見てから何だか神様というか、妖精のように見えたり、もちろんこうやって話すと私より大人な大人の人で。でも、子どもと話すときは少年のようで………。不思議と感じるのは、もしかして私があなたを知らないからかなって思ったんです」
 「………彩華さん……」
 「前にお話した気になる人も私の中ではとても大切になっていました。……けれど、1年前からずっと、気になっていたのは葵羽さんで、今も考えてしまうのは………葵羽さんなんです。もっと葵羽さんを知りたいし、一緒にいたいし……初めての恋人として、いろいろ幸せなことを一緒にしたい。そう思ったときに思い浮かぶのは、葵羽さんなのです」


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