俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
店を出た後は、今日は歩いてきたという葵羽が、彩華を家まで送ってくれた。
次の日が早番だと言うと、「早めに帰った方がいいですね」と、心配してくれたのだ。
店を出てすぐに、葵羽は彩華の手を見つめて「手を繋いでもいいですか?」と、言った。彩華は少しだけ躊躇いながらも、「はい」と返事をすると、彼の大きな手が彩華を包んだ。細くて長いゴツゴツとした手。あの彼とは違うな、と思ってしまったのは秘密だ。この大きな手の温もりと共に歩いていくと思うと、彩華の胸がきゅーっと締め付けられたような気がした。それが、幸せな証拠だと、少しずつわかり始めていた。
店から彩華の家までは近かったので、恋人になってからのデートはあっという間に終わってしまった。
彩華は緊張してはいたけれど、やはり好きになった人が目の前にいるのに、もう離れなければいけないのは寂しい。しかも、まだ日は出ている時間帯だ。葵羽の気遣いは嬉しいけれど、彩華の本音は「まだ一緒に居たい」だった。
「あの………ここが私が住んでいるアパートなんです」
「あぁ、ここですか。静かな所でいいですね。駅から離れているので、夜のデートの後は送ります」
「ありがとうございます………」
名残惜しくて彩華は繋いだ手を離さずに居ると、葵羽は少し苦笑いをした。