俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 付き合い始めてから、葵羽と彩華は毎日欠かさずに連絡をし合っていた。お互いに忙しい日もあり、挨拶ぐらいしか出来ない事もあった。けれど、それでも彩華にとっては毎日が新鮮であり、大きな変化だった。仕事をしている時も、葵羽から連絡は来ているか、次はいつ会えるかなど考えてしまうのだ。
 そして、葵羽は会った頃から変わらずとても優しかった。
 帰りが遅くなる時は、葵羽が車で迎えに来てくれて、そしてそのご飯を食べて帰る事が多くなった。いつもご馳走になってしまい申し訳なさそうにすると「では、もう少ししたら手料理を食べさせてくださいね」と言ってくれるのだ。

 そして、付き合うことになって初日に「キス」の話しをしたけれど、彼はそれ以降そんな話しをしてこなかったし、キスすることはなかった。やはり彼は口では冗談を言いつつも、紳士なんだなと思ってしまう。
 けれど、会う度に彩華は「もしかして、今日かもしれないと」緊張してしまっており、それがないとわかると、ホッとしつつも、少し残念な気持ちになるのだ。そして、そう思ってしまう自分が恥ずかしくなる。
 どれだけキスに憧れがあるのだろうか。悶々としているようで、はしたないなとも思ってしまう。
 けれど、愛しい人とのキスを憧れるのは仕方がない気もしていた。



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