俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「今日も食事をご一緒したかったのですが、今から用事がありまして。秋祭りの打ち上げ、という名の飲み会があるのです」
「え………そうなんですね。そんなに忙しいのにわざわざすみません」
「いえ。少しでも彩華に会いたかったのですよ」
「…………それは………私もです」
葵羽の言葉はとても甘いものだった。
けれど、彼が忙しいときにまでこうやって気を遣わなくても大丈夫だと思ってしまう。けれど、こうやって言われてしまうと何も言えなくなってしまう。ずるい、と思ってしまう。
彩華は頭の中で考え込みながら話しをしていたらので、少しぎこちない会話になってしまう。
そして、気がつくと車が停まった。あっという間に彩華の家に到着してしまったようだった。彩華はハッとして周りをキョロキョロと見た。
「あ、もう家に着いたのですね」
「はい。名残惜しいですが………。あの、彩華さん、考え事ですか?」
やはり葵羽にはわかってしまっていたようだ。彩華がぼんやりと会話をしていたところをよく彼は見ているのだ。さすがは、年上と言ったところだ。
彩華が言葉を詰まらせて迷っていると、彼はニコニコと微笑んで待ってくれている。
それを見ると、彼に話しても大丈夫じゃないかと思えてしまう。葵羽にはそんな力があると思った。