俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
彩華の頭は真っ白になっていた。
何の事なのか、理解が出来ない。
すると、彼の細い指が彩華の唇に触れてた。以前、夜景を見に行った時と同じだった。
「………あなたにキスしてもいいですか?」
「…………」
断るはずもない。
けれど、彼はきっと彩華が初めての恋人というのを気にしてくれているのだろう。けれど、そんな事を気にして欲しくはない。
彩華は葵羽の彼女になったのだから。
「………そんな事、聞かないでください」
「それは………」
「私だって葵羽さんが好き、なんです。葵羽がキスしたいと思ってくれたのが嬉しいし、私だって、したいです。だから、葵羽がしたい時にして欲しいです」
「………彩華さん。それは男にとって殺し文句ですよ」
葵羽は驚いた顔をした後、少し負けたような悔しそうに微笑んだ。
そして、彩華の片方の頬を手で包みゆっくりと見上げるように促す。
彼の整った顔がゆっくりと近づき、彩華は咄嗟に強く目を閉じる。しかし、彼が微笑んだのがわかった気がした。
しばらくすると彩華が経験したことがない感触が、唇に落ちてきた。
冷たくて柔らかい。ただ唇同士が触れ合っているだけなのに、体が熱くなる。そんな不思議な感覚だ。
それ以外は緊張から考えられなくなっていた。
けれど、今までで1番葵羽を感じられた事が、彩華は嬉しくて、キスの感触に酔いしれてしまったのだった。