俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 そんな葵羽が、誰とも付き合った事もないアラサーの女を選ぶなんて、と今でも少し信じられない。けれど、彼の言葉はそんな彩華の心を安心させてくれるほど、甘くて優しいものだ。
 愛されているのを感じられて、不安になるのは贅沢なのかもしれない。けれど、恋愛とはそういうものなのだとも、彩華は少しずつわかってきた。


 そして、キスをしてくれたり自分を求めてくれるような言葉を言われるのは、本当は嬉しかった。自分の好きな人に、キスしたい、抱きしめたい……それ以上の事も、と望まれるのは、とても恥ずかしいけれど幸せだった。

 初めてのキスを経験したばかりなのに、彼のキスを味わってしまったら、次はいつしてくれるのかな、なんて言葉では言えないけれど、期待しまうものだ。
 女の子からキスを望むのは、少しはしたないのだろうか。
 けれど、彩華の本心はそういう気持ちになることもあるのだ。


 嫉妬をしたり、彼を求めたり。
 そんな風に心の中では考えていると葵羽が知ったら、どう思うのだろうか。

 そんな心配をしてはため息をついた。

 考え事をしている時間はあっという間だ。
 時計を見ると、あと1時間ぐらいで約束の時刻になってしまう。


 「今から作れば丁度いいかな」


 いくら考えても答えは出ないのだ。
 彩華はそんなマイナスな思考はダメだと思い直し、葵羽に手料理を少しでも喜んでもらえるように、準備を始めたのだった。



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