俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
「はぁー………何とかしないとなー」
彩華は今日何回目かになるため息と共に言葉を漏らした。仕事から帰りながらも考える事は彼の事ばかり。
そんな時だった。
「おいっ、彩華っ」
「え………」
街中で偶然出会った人がいた。
真っ黒な髪と瞳の彼。祈夜だった。
彩華は久しぶりに会う彼を見て、そして声を掛けられた事に驚いた。
祈夜に最後に会ったのは、告白を断ったあの日以来だ。初めて男の人から告白された。手を握ってくれた。そんな彼を彩華は振ってしまった。それは、葵羽を選んだから。
彩華は少し気まずくなり、「久しぶりだね」と返事をしながらも、表情が固くなってしまったのが自分でもわかった。
すると、祈夜は不機嫌そうな顔をしながら、また彩華の手を取った。
出会ったときと同じ様に。
「え………なに……」
「おまえ、何その顔……死んでるけど」
「し、死んでる?」
「意気消沈って感じ」
「それは………」
何も言えずに彩華は困っていると、祈夜は勝手にズカズカと歩き始めてしまう。もちろん、彩華の手は繋いだままだ。
「ど、どこに行くの?」
「決まってんだろ。店だよ」
「離して。行かないわ」
「離すわけねーだろ」
「祈夜くん!離してよーっ!」
彩華が嫌がっても祈夜が離してくれるはずもなく、ずるずると引っ張られるように祈夜の店と行く事になってしまったのだった。