俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
お店に入ると、顔馴染みのスタッフと他に知らない人がいた。背が高く、肌が黒く短い髭をはやした人だった。彩華よりは年上のように見えたが、まだ若いのがわかった。
「おかえり…………って、祈夜が女の子連れてきたぞ!もしかして、あの子が……」
「そうですよ。祈夜の初恋相手でしかもフッた女の人です」
「なるほどねー。それで、また諦められなくて拉致してきたのか」
「うるせーよ!兄貴っ!」
スタッフと盛り上がる髭の男性に向かって、祈夜は怒鳴り声を上げた。彩華は祈夜の言葉で彼が誰なのかようやくわかったのだ。
「祈夜のお兄さん……」
「そ、買い付け終わって帰ってきた」
「祈夜の兄です。諦め悪い弟でごめんね」
「そんなんじゃねーよ!」
祈夜はブツブツと文句を言いながら、彩華をカウンターに座らせて、祈夜も彩華の席に座った。
「ディナープレートとホットウーロン2つずつ。兄貴の奢りで」
「何でだよ。普通女の子の前なら自分で奢るだろ。しかも酒じゃないか?」
「いいんだよ。それにこいつ酒弱いから」
「弱くないよ!」
「酔っぱらってウトウトしてただろ」
「あれはいろいろあって…………」
そんなやり取りを見ながら祈夜の兄は楽しそうに微笑み、そして「待っててね」と料理を作り始めてくれた。