俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
いつものように彩華の歩調に合わせてくれる事はなく、ずんずんと歩いていく葵羽の後ろを必死に着いていく。けれど、それもすぐだった。
近くの路地裏に連れ込まれ、そのまま壁際まで追い込まれる。夜の路地裏はまさしく真っ暗闇だった。
「彩華ちゃん………あの人は誰?」
「……前に話した人だよ。私を街で助けてくれた人。今は、大切な友達」
「あいつは君が好きだったんだよね?」
「そう、だけど…………」
「君は男に甘えて慰めてもらうような人なの?」
「違う………そうじゃなくて………」
「違わないよね?」
葵羽は彩華に近づくと、そのまま手を壁について彩華を捕らえるように腕で彩華の事を囲った。
「浮気してたんでしょ?」
軽蔑するような冷ややかな目を彩華に向けた。
彩華はそれを見た瞬間に目に涙が浮かんできた。それは悲しみなのかもしれない。けれど、1番に感じたのは怒りだった。
どうして、そんな事を言うのか。
自分がどんなに悩んでいたか。
何も教えてくれない、自分の事を信じてくれていなかったのは、あなたなのに。
その次に感じたのは悲しみだった。
自分が愛しているのは、あなただけなのに。
そんな事を言われてしまうのが、とても辛かったのだ。
葵羽が、彩華の頬に触れた時。彩華は葵羽は彼の体を両手で力いっぱい押した。
彼の体はほとんど動かなかったけれど、彼は腕をほどいたので、彼の拘束からは逃げる事が出来た。
彩華はキッと彼を強く睨みつけた。