俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
葵羽ルート 11話「白息」
葵羽ルート 11話「白息」
★★★
彼女が悩んでいる理由も、求めている事もわかっていた。
それなのに、それを無視続けていたのだ。
けれど、彩華にそれを伝えるつもりも、彼女の要望を叶えるつもりも葵羽にはなかった。
だけれど、いつも温厚で優しく笑顔を見るだけで癒される。
そんな彼女が泣きながら怒った。
そんな風にさせてしまうまで、彼女を追い詰めていたのは自分なのだ。
目の前でそんな彩華を見ると、さすがに心が締め付けられる思いだった。
もう彼女に伝えてしまおうか。
そう思って口を開きそうになったけれど、それを葵羽は躊躇ってしまった。
話して彼女が納得してくれるというのだろうか。そして、理解してもらえるのか。そんな事を考えると、どうしても言葉には出来なかった。
彼女の事は、とても大切で愛おしいかった。
会えば自然と笑顔になれるし、大切にしたいと思った。もちろん、彼女との未来を考えないわけではなかった。
けれど、不安になってしまう。
原因はもちろん自分にあるのだ。
…………彼女を巻き込んでしまっていいのか、と。
そう悩んでいる内に彩華は自分の前から走り去ってしまった。
咄嗟に手を伸ばしたものの、追いかける事など出来るはずもなかった。
たまたま店内で楽しそうに話をする彼女を見かけた。その相手が知らない男だった事にカッとなり頭に血が上ってしまったのだ。
話を聞きたいだけなのに、冷静にもなれずに彼女の心を疑ってしまった。
明らかに自分が悪いのに、それを認めようとも出来なかった。