好きなんかじゃない
藤田はどこにもいない。
校庭の陰、空き教室の中、校舎裏、屋上。
時間は、過ぎていく。あと、10分でまたチャイムが鳴ってしまう。
諦めようかな。さすがに疲れちゃった。
屋上の貯水タンクのヘリまで登って学校を上から見回した。
秋の涼しい風が吹く。
そういえば、私、入学してから半年くらいたつけど、初めて授業をさぼったなぁ。
上から見ると、学校ってヘンな感じだな。
理科室では黒いカーテンを閉め切ってる。何かの映像でも見てるのかな。
風に乗って合唱の声も聞こえてくる。
そういえば、私にはあんまり関係ないけど、もうすぐ文化祭なんだっけ。
あのクラスは合唱コンクールに出るのかな?
藤田も、この光景を見たことあるのかな。
いかにも貯水タンクに寄りかかって昼寝していそう、っておもったんだけどなぁ。

なかなかうまくはいかない。
私は貯水槽から下りる。
高いとこって上る時より降りるときのほうが高く感じるのってなんでだろう。
よいしょ。
私は足ではしごの段を探して足をかける。


「うわぁ!なにやってんの!」


後ろからいきなり声がぶつかってくる。
あっ
足を踏み外した。
いきなりの事で手が体重を支えられない。

落ちるっ……

私は落ちた。
というよりも、目の前に広がった青空、それがだんだん遠くなり、ついには視界にとらえきれなくなる。
そして、背中にきた衝撃。
それで、わかった。私は落ちた。
痛み、というよりも、背中の衝撃が引かない。


「ちょっ、と、気をつけろよ!え?大丈夫?」

私を覗き込む顔がある。
あー、私、探してたんだよ。
ふじ、た……
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